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Interview インタビュー
FPS レジェンド / プロゲーマー 南“KeNNy”慶紀氏

プロゲーマーであり FPS レジェンドと呼ばれる KeNNy 氏に、自身の活動や eスポーツ、そして愛用する Realforce について伺った。

南“KeNNy”慶紀氏 プロフィール

eスポーツという言葉が日本に定着するはるか前の2002年から対戦 FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)である Counter-Strike 1.6(カウンターストライク)のシーンの最前線で活躍し、日本初のプロゲーミングチーム 4dN.PSYMIN(フォーディーエヌサイミン)のリーダーとして海外大会などで活躍。その後、Sudden Attack(サドンアタック)、Alliance of Valliant Arms(AVA)にて公認インストラクターを務める。現在は主に VALORANT(ヴァロラント)で解説などのタレント活動を行うほか、大会への出場も積極的に行う。

“レジェンド” KeNNy さんと Realforce の出会い

長年 eスポーツ業界で活動を続けている KeNNy さんですが、インタビューを受けることは珍しいですよね?

KeNNy 氏

記憶にある限りでは、『Negitaku.org(2002年から今に続く、主に eスポーツの話題を取り扱う独立系メディア)』の派生サイトに『GEAIM』というものが昔あったのですが、そのインタビューが最後かもしれません。
当時のインタビューのアーカイブ は現在でも閲覧可能)

KeNNy さんが大会への挑戦を始めたのが2002年だそうですが、Realforce を使い始めたのはいつ頃だったか覚えていますか?

KeNNy 氏

まだプロになる前の 4dN(日本初のプロチーム『4dN.psymin』の前身である『Four Dimension』の略) で国際大会の予選を勝ち抜いて本選に出場したときですね。2004年の夏の CPL(Cyberathlete Professional League、当時のアメリカ最大規模のゲーム大会であり LAN パーティイベント)です。本選が始まる2週間前から自腹を切ってアメリカに渡って練習していました。そのときのチームメイトが持ってきて使わなくなっていた Realforce 101 を借りてみたら、めちゃくちゃ打鍵感が良く、譲ってもらいました。手のひらでバッと押すと全部認識する、N キーロールオーバーに対応しているキーボードは当時少なかったのでめちゃくちゃ感動しました。

Realforce 101 だと変荷重タイプですね。変荷重だとゲームにはちょっと…という声を聞くのですが、実際に使用してみてどうでしたか?

KeNNy 氏

変荷重であることはあまり気にならなかったですね。むしろ、外側のキーがやわらかいので、力の入れにくい小指や薬指で意識しなくても押せるのが自分にとって利点でした。去年、 Realforce RGB TKL に変えるまでずっと使っていました。

となると16年も?

KeNNy 氏

はい。自分はデバイスをコロコロと変えたくないんですよね。マウスやマウスパッドもそうですけど、使い慣れたモノをずっと使いたいというのがあります。Realforce RGB TKL にしてからは、やはり他のキーボードを触っていません。

かなり徹底されていますね。他のキーボードを試したこと自体は過去にはあったと。

KeNNy 氏

はい。ただ、自分のタイピング速度に追いついてこなかったり、キーの反応が悪くなったりで、やっぱり Realforce に戻りました。今だと Discord などのボイスチャットを使ったコミュニケーションが一般的ですが、当時は IRC(インターネット初期のリアルタイムチャットシステム)のテキストチャットが主体で、タイピングする機会が今よりも多く、Realforce 101 は反応速度もピカイチでしたし、タイピングのしやすさって意味で、東プレが一番でした。Realforce 101 は世界中の大会に持って行って使っていた大切なキーボードです。過去、ゲームするときだけ特化したキーボードに切り替えたこともありますが、それも面倒になり、ずっと Realforce 101 を使っていました。

KeNNy さんのご自宅のデスク周り。

現在、Realforce RGB TKL を使われているのは何故ですか?

KeNNy 氏

キースイッチの重さが丁度良いのと、VALORANT(ライアットゲームズ社がサービスを提供する無料の対戦 FPS)に限って言うと、アビリティ(射撃・移動のほかに各キャラクターが持つ)が使いたいタイミング以外で出ることがほぼ無かったのが理由ですね。押し間違えがほぼ無いに等しいです。

ちなみに Realforce RGB から追加された APC 機能は活用されていますか?

KeNNy 氏

最初から良い機能だなと思って設定しています。まずは全部 1.5mm にしてより速く反応させて、よく使うアビリティの[ T ]とリロードの[ R ]だけ 3mm にしています。間違って触れて、撃ち合い中にリロードとかアビリティかまえちゃって負けるのは嫌なので、保険として設定しています。よく使うアビリティは[ T ]に設定しています。

APC 機能を活用して、より速い操作とミスを減らすことを両立されているのですね。ちなみに、Windows キーはどうされていますか?

KeNNy 氏

そこだけキーロックしています(※)。やっぱり、これだけはちょっと因縁の相手なので… 昔、さんざんこれにやられましたからね(笑)
(※[ Fn ]+[ F12 ]キー同時押しでキーロック有効/無効)

KeNNy さんの APC 設定スクリーン画面。

キーロックがなかったときは?

KeNNy 氏

もう押さないようにキーキャップ自体を外していました。

その気持ちは物凄く分かります。ところで、よく使うアビリティに[ T ]ということで、キーバインド(キーの割り当て変更。キーアサインとも言われます。)が少し違っているなと感じたのですが特にこだわっているところはありますか?

KeNNy 氏

VALORANT のアビリティは通常設定だと CQEX に割り当てられていて、移動は WASD じゃないですか。大半の人は人差し指・中指・薬指で移動していると思うんです。自分は、多分あまり他にはいないと思いますが、中指・薬指・小指で移動をやっています。

え!?

KeNNy 氏

なので、[ F ]を歩きにしたり、[ C ]をしゃがみにしたり、そのあたりを人差し指で押しています。[ Shift ]も[ Ctrl ]も使わないです。
(※ 通常の歩きは[ Shift ]、しゃがみは[ Ctrl ])

それは本当に珍しいと思います。

KeNNy 氏

だから、[ X ]と[ Q ]はそのままなのですが、[ T ]と[ V ]に割り当て、オブジェクト使用は[ E ]に割り当てています。

VALORANT はもちろん、Counter-Strike など多くのゲームがデフォルトで[ Shift ]と[ Ctrl ]を使いますが、いつ頃からこの形に?

KeNNy 氏

もう最初からです。

それは一体なぜ?

KeNNy 氏

しゃがみや歩きを必要としないゲームからスタートしたので、こういうものだと思ってやっていました。あとはタッチタイピングのホームポジションそのままですね。

何か明確な利点はありますか?

KeNNy 氏

たとえば、歩きながらしゃがみやジャンプをする必要ってあると思いますが、小指は多くの人にとっては動かしづらい。それが人差し指でできるので… それくらいかな(笑) あとは、これに慣れてしまったので、逆に一般的なやり方だとできないですね。

個人的にはかなり衝撃でした。

KeNNy 氏

過去に同じ配置の人もいましたけど、珍しいと思います。

レジェンドと呼ばれてもチャレンジを辞めないワケ

KeNNy さんは今までも様々なタイトルで公認インストラクターを務められたり、解説などの活動もされたりしてきたわけですが、今になってまた VALORANT Champions Tour などの大会にも出場している理由は何ですか?

KeNNy 氏

単純に、大会に出るのが好きだからですね。FPS を長年やってチームでの実績もある自分が出ることで、ちょっとでも盛り上がってくれればいいなとかもあります。たぶん、目立ちたがり屋なんですよね。もちろん、中途半端な気持ちではなくて、勝ちたくて皆でやっています。やりたいって思いが一番かなと。

ちなみにですが、今おいくつになられましたか?

KeNNy 氏

35歳になりましたね。FPS をガッツリやるようになってから、だいたい21年くらい経ちますね。

昔と比べてやっぱり違うところってありますか?

KeNNy 氏

自分がやられたり、敵を見つけたりで報告するときにマップの名称が瞬時に出ないことが多々あります。あとは、反射神経よりは判断力。味方から報告をもらって判断するって部分で衰えを一番感じますね。

逆に、年齢を重ねて良くなったな、というところはありますか?

KeNNy 氏

倒されてもキレなくなったことですかね(笑) 徐々にだと思いますが、知り合いと一緒にやっていて、「なんか落ち着いたね」って言われ始めたのがだいたい二十代の半ばから後半だったというのは覚えています。今もやられたら悔しいですが、ゲームに対する姿勢が変わって、楽しむことをまず前提としているので落ち着きましたね。

それは趣味の筋トレも影響していますか? 以前、そういった記事があった気がするのですが… KeNNyさんは、良くなったとか思う部分はあったりしますか?

KeNNy 氏

やっぱり、筋トレをするとメンタルが鍛えられます。自信が湧いてくるっていうのはなんとなくあるので、そういうところがゲームにも影響があるんですかね。負けそうな状況になっても、ポジティブでいられるような。歳食ったからっていうのもあるかもしれないけど、多少なりともあると思います。

過去に見た eスポーツの情景とイマ

KeNNy さんご自身が最前線に立たれていた当時、eスポーツのその先について感じていたことは覚えていますか?

KeNNy 氏

言ってしまえば、否定的だったと思います。それこそ当時は、日本で FPS している人達は一握りだったし、自分達が国内で練習相手がいないって言っているぐらいでした。今みたいに Twitch で当たり前のように試合が配信されて、ストリーマーやプロゲーマーがいることを全く想像できなかったですね。

逆に、当時だからこそみたいな忘れられないエピソードはありますか?

KeNNy 氏

さっきお話で出た2004年夏の CPL の時に、アメリカで練習用施設にしようとしていたネットカフェみたいなところに皆で行ったのですが、全然練習できるような環境じゃなかったんです(笑) これはやばいってなったときに、たまたまそこのスタッフの人が、その国際大会のスタッフだったんですよね。しかも、日本語は全然喋れないけど、日本語の名字の方だったので親近感があって。その人に事情を説明したら、練習できるところに連れて行ってくれたり、国際大会の本番の前にそこに出る強いチームたちも参加するトーナメントにも招待してくれたりしました。その人と出会っていなかったら、そのトーナメントでたくさん練習して、アメリカのチームに自分達の悪いところを教えてもらい、結果として、本戦でヨーロッパのチームとまともに戦うことなんてできなかったです。だから、これは凄いご縁だったなって、なかなかできないようなことを経験したなって改めて思いますね。

すごい運命的な出会いだったんですね。今の eスポーツに関して、KeNNy さんが将来期待していることはありますか?

KeNNy 氏

自分が、こうなるといいなって思い描いていることといったら、例えば、街で歩いていたり電車に乗っている時に、何かしらのゲームの選手の名前や会話が聞こえてきたり、日常的になるようなそれぐらいの認知がされている状況になって欲しいと思います。あとは、今、スポーツバーとかサッカー中継がされているところでも、自然に、何かしらのタイトルの大会中継が行われて、お酒を飲みながら観られるような。今は大会の主催側がイベントとしてやりますが、もうお店が主体でそういうのをやりますぐらいが日常的になって欲しいという希望があります。

Realforce の推しのポイント

最後に、改めて Realforce を自分の周りの方とか、若手のゲーマーの方に向けておすすめしていただけるとしたらどういう部分になるでしょうか。

KeNNy 氏

まずは、ラインナップが豊富で、日本語、英語、テンキーあり・なし、キースイッチの荷重、APC 機能、色んなものを使いたい方にはいいと思います。あとはキー部分へのこだわりでも Realforce かなっていうところですが、自分として一番推せるところで言うと耐久性ですね。散々海外に Realforce を一緒に連れて行きましたけど、壊れたことも不具合が出たこともありません。まだ若い方にも、ちょっとお値段は張りますが、自分も最初に使っていた Realforce を16年間使っていたので、長く使えるよっていう意味で、ぜひ Realforce をおすすめしたいですね。

文=鈴木康太 写真=志田彩香